ファースト・フライト・カバー(1950年代)
BOAC(英国海外航空)
ロンドン・東京線 コメット就航記念
1953年(昭28)4月3日


 1952年(昭27)5月2日、世界最初のジェット旅客機による定期便が、ロンドンから南アフリカ・ヨハネスブルグに向かった。使用されたのは、イギリスのデ・ハビランド社が開発した「コメット」機。
 「コメット」の路線はその後アジア方面へ伸び、セイロンやシンガポールに至ったが、1953年(昭28)には、この記念封筒のように東京に達した。
 まだジェット旅客機の草創期に、アメリカなどではなく、東洋の小国・日本がその目的地のひとつであったことは驚きを感じるが、これは、同機がまだ大洋を越えるほどの性能を持っていなかったからである。何度も着陸しながら目的地にたどり着くのが精一杯であった。
 
日本航空
国際線開設記念
1954年(昭29)2月2日


 戦後、日本は長らく連合国側から航空に関する活動の一切を禁じられてきた。しかし冷戦の開始と朝鮮戦争が、そうした情勢に変化をもたらす。
 1951年(昭26)に日本航空は国内線の運航を開始。それからわずか3年後、初の国際線として、太平洋線が開設された。これは、その第一便で太平洋を渡った記念封筒である。
 なお、後発のアジア各社の多くが、最初は近隣諸国への国際線からスタートしたことを考えると、最初から太平洋線というのは非常に気宇壮大である。
日本航空
国際線開設記念
1954年(昭29)2月3日


 こちらは、太平洋線と同時期に開設された、東京・沖縄線の記念封筒である。宛先を見ると、那覇からの折り返し便に搭載されたことがわかる。言うまでもなく、当時の沖縄はアメリカの治世だったので、切手も「琉球郵便」となっていた。
 日本航空ではその後、1956年(昭31)に福岡・沖縄線、1961年(昭36)に大阪・沖縄線が開設されている。なお、東京・沖縄線は、翌年に香港へ延長され、東南アジア方面への路線の足ががりとなった。
 
スカンジナビア航空
北極経由北欧・東京線開設記念
1957年(昭32)2月


 高緯度に位置する北欧の航空会社にとって、遠方の目的地へより短時間で到達するには、極地を通過するのが近道な場合がある。そのような訳で、スカンジナビア航空は、北極航路開拓の先駆となった。
 最初のアメリカ西海岸へのルートに続き、1957年にはアンカレッジ経由で東京へのルートが開かれた。右はその帰り便に搭載され、コペンハーゲンに戻った記念郵便である。
 同社はユーラシア大陸を挟んで、南回りと北回りの路線を両方運航する初の会社となった。左下の"グローバル・エアライン"というキャッチフレーズが似つかわしい。
 


「ピョンヤン−モスクワ 定期航路 Tu104運航記念」?
1959年3月4日 ピョンヤン
アエロフロート/モスクワ・ピョンヤン線開設記念 1959年(昭34)3月3日

 ソ連国営航空・アエロフロートは、当然のことながら東側諸国に広く路線を伸ばし、極東では中国や北朝鮮などが主要目的地にあたる。これは、北朝鮮に乗り入れたときの記念郵便で、裏面には右のような記念スタンプが押されていた。
 封筒はソ連の航空郵便用のものらしいが、イラストの地図上のモスクワに赤い星が打たれ、その上には当時のソ連が誇るジェット旅客機"Tu-104"の姿が浮かぶ。貼られた切手にも同機が描かれ、白い帯の中には(判読が難しいが)「世界最初のジェット旅客機・Tu-104」というような文言が書かれている。当時のソ連のプライドが伝わってくるようだ。
 今日のシベリア空路は、多くの便がノンストップで飛び交う大幹線であるが、1950年代前半は当時のソ連機の性能から、何回も寄港を繰り返しながら2・3日がかりでモスクワと極東が連絡されるような状態であった。(西側の航空機は全く飛んでいないし、西側の人間で乗ったことのある人も稀であろう。) 1956年(昭31)以来、「Tu-104」の就航によって、シベリア横断は途中2回寄港で10時間程度に短縮されたが、おそらくは飛躍的な革新だったはずである。
 
 
パンアメリカン航空
太平洋線 ジェット機就航記念
1959年(昭34)9月7日


 アメリカのフライト・カバーは、封筒に記念スタンプを押した程度のものが少なくない。イベントの重要性に応じ、もっと彩り豊かなものもあれば良いのだが・・・。
 大西洋線への本格的ジェット機の就航から1年後、太平洋にもジェット化の波が押し寄せた。当時の世界のトップをゆくパンナムの、ボーイング707が東京とアメリカ西海岸を結んだ。
 この後約1年間、日本航空は、ジェットに対して従来のプロペラ機で対抗しなければならないという、やりきれない時期を過ごすこととなった。
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