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Deutsche Reichsbahn Dresden 1943/05 AMTLICHER TASCHENFAHRPLAN
(公式小型時刻表)
1943(昭18)年5月
Deutsche Reichsbahn
Reichsbahndirektion Dresden
(ドイツ帝国鉄道・ドレスデン鉄道管理局)
187mm×123mm 352頁
中欧へ吹き荒れたナチスドイツの嵐

チェコスロバキア解体
 ナチスの鉤十字が表紙を飾るこの時刻表は、第二次大戦中にドイツの国有鉄道が発行した地方版です。ドレスデン鉄道管理局の管轄地域である、ドイツ東南部のザクセン州および、ズデーテン地方の路線が網羅されていました。ズデーテン地方は、ドイツとチェコの国境地帯のチェコ領を、1938年(昭13)にドイツが併合した土地です。
 戦前最後のオリンピック・1936年(昭11)のベルリン大会が終わると、ヒトラー率いるナチスドイツは急速に欧州の覇権に向けて勢力を拡大していきました。ズデーテン地方併合の年には、オーストリアもドイツ領となっています。そして翌年の1939年(昭14)3月には、ドイツ軍はプラハへ進撃。チェコのボヘミア地方とモラビア地方はドイツの保護領となり、スロバキアは独立。チェコスロバキア共和国が消滅してしまいました。
 この時刻表の巻末には、下の画像に示すように、これらの保護領の鉄道時刻も掲載されています。駅名はドイツ語とチェコ語の併記でした。
爆撃にさらされる鉄道
 この時刻表からは、戦前の一時期を彩った長距離ディーゼル特急などの姿は消え、戦時中ゆえの特殊な記述が随所にあります。例えば、『Erst siegen - dann reisen !』(まず勝利−旅はそれから)という標語や、列車番号に付与された「mW」という記号(mit Wehrmachtzugtell - ドイツ国防軍用車両連結)が右の画像にもみられるほか、別のページにある空襲警報発令時の対応方の告知からは、厳しさを増す戦時生活がうかがえます。

 なお、大戦終了間近の1945年(昭20)2月、この時刻表の発行元の鉄道管理局のあるドレスデンは、連合軍の無差別爆撃を受け、今に至るまで語り継がれる壊滅的な被害を蒙りました。
関連項目

豪華列車が彩った大戦間の欧州(ドイツ帝国鉄道/ミトローパ、1931年)
高速ディーゼル特急が都市間輸送をスピードアップ(ドイツ帝国鉄道、1933年−1936年)
欧州戦線の終結と米軍による鉄道管理(米陸軍・欧州軍用鉄道、1945年)
東西ドイツを走り抜けた米軍専用列車(米陸軍・第8運輸交通統制グループ、1951年)
TEE−ヨーロッパに広がる国際特急網(西ドイツ国鉄、1958年)
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