YS-11博品館


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7.オリンピック航空時刻表
 YS-11は、アジア・南米・北米におもに輸出され、「バイカウント」「フレンドシップ」や「ホーカーシドレー748」といったライバル機種のひしめく欧州での活躍は限られていた。その唯一の例がギリシャのオリンピック航空である。オリンピック航空は1970年(昭45)以降、のべ10機を導入し、事故で2機を失いながらも1980年代初頭まで約10年運航した。
 同社で使用されたYS-11には、「Isle of Andros」など、島の名前が一機ごとに愛称としてつけられており、機首にギリシャ文字で記されていた。

 これは、1975年(昭50)年夏季の同社の時刻表。航空会社の時刻表にしては珍しく、使用機種がすべて写真入りで紹介されており、もちろん、YS-11も掲載されていた。国内線の時刻の使用機種欄には、YS-11がひしめいていた様子がわかる。
 九州と北海道を合わせた程度の面積で、エーゲ海を跨いで往来する方が近い地域や小さな離島を多く抱えているという国土の特性から、短距離航空路線の果たす役割が大きいギリシャには、同じく狭い島国日本に適合してつくられたYS-11がフィットしたと言える。

 オリンピック航空で使用されたYS-11はギリシャ空軍に売却され、さらにしばらく飛びつづけた。
8.中華航空時刻表
 YS-11のアジアでの活躍は、日本以外に、韓国・フィリピンそして台湾が挙げられる。いずれも、1960年代後半から70年代初頭にかけて引き渡され、それまでのDC-3などの旧式ピストン機の置き換えという役割を果たした。しかし、特に韓国と台湾では、経済成長とそれに伴なう航空需要の急増により、すぐにジェット化が進行し、YS-11の活躍は残念ながら短期間で終わることとなった。

 下は、1970年(昭45)年7月から有効の中華航空国内線時刻表。台湾の国内線は、台北−高雄という2大都市を結ぶ幹線や、東部の花蓮といった主要地方都市を結ぶ路線で、中華航空と遠東航空が競合するという、あたかも日本の航空界と似たような構図があった。そこで、1960年代に入って航空需要が増加すると、両社とも近代化に着手して続々と新機種を導入し、しのぎを削ることとなる。1966年(昭41)には遠東航空が、ハンドレページ・ダート・ヘラルド双発ターボプロップ機を導入。中華航空は1969年(昭44)12月にYS-11を導入することで、ターボプロップ化を果たした。
 中華航空では合計2機のYS-11を導入したが、残念ながら一機が台北での墜落事故で失われた。下はその事故の直前の時刻表で、台北−高雄・花蓮といった幹線に、朝から夜まで休まず就航していた様子がわかる。

 その後、中華航空も遠東航空も、ボーイング737を中心としたジェット主体の時代に入ったが、中華航空の残った一機は1979年(昭54)まで台北−台中線で運航を続けた。
9.大韓航空国内線運航路線図
 台湾と並び、日本にもっとも近い地域でYS-11が活躍したのが韓国である。韓国では1969年(昭44)に、経営不振に陥っていた準国営企業の大韓航空公社を、韓進(ハンジン)グループが引き受ける形で今日の大韓航空が成立したが、その立ち上がり時に最初に導入されたのが、YS-11であった。

 大韓航空公社が民営化された1969年3月当時の保有機は、1機のDC-9のほかは全てプロペラ機であり、F-27フレンドシップが4機(フェアチャイルド社がライセンス生産したFC-27含む)・DC-3が2機・DC-4が1機という陣容であった。これは、日本航空をはじめ当時の東アジア地域の代表的航空会社の水準と比較すると数的・質的に大きく差があり、民営化を契機にまず社が着手したのが機材の近代化であった。そうした背景で1969年(昭44)年4月に1番機をリースで導入して以来、延べ8機が導入されている。
 ここに紹介するのは、1971年(昭46)頃に発行された同社の国内線運航路線図である。内容は当時の運航路線や搭乗案内であるが、保有機種紹介として、当時の主力機・ボーイング720等にまじってYS-11が紹介されている。

 大韓航空のYS-11にまつわるエピソードの中で有名なものは、1969年12月11日に発生したハイジャック事件であろう。江陵発ソウル行きのYS-11が北朝鮮の工作員に乗っ取られて北朝鮮に着陸させられ、乗員と乗客の一部は現在も抑留されたままである。機体も返還されていない。

 大韓航空のYS-11は国内線のほか、釜山−福岡線済州−釜山−大阪線といった近距離国際線にも就航したが、同社がボーイング727を導入してジェット化が進行すると活躍の場は狭まり、1974年(昭49)年に大部分が売却された。最後に残った1機が1977年(昭52)売却されて全機引退した。

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