戦前日本とその支配地域の船会社(近海航路と国内航路)
海に囲まれた日本は、どこへ行くにも船は欠かせない交通手段でした。
しかし戦前のそれらの中には、近隣への勢力拡大の一端を担ったものもありました。
そうした歴史を背負った資料をご覧下さい。
大阪商船
神戸基隆線定期發着表 1932年(昭7)4月


就航航路:神戸−門司−基隆(台湾)
就航船名:扶桑丸、蓬莱丸、瑞穂丸


・4、5日に1回の割で神戸を出帆。
・当時の使用船は、欧州で使われていた中古船であった。
・数年後、名高い「高砂丸」が就航する航路。

[この年…満洲国建国、5・15事件]
1940年(昭15)の大阪商船・台湾航路の定期表は本館をご覧下さい。
摂陽商船
定期發着表 船客運賃表 1938年(昭13)9月


就航航路:阪神−淡路島、阪神−四国、阪神−山陽方面等
就航船名:此花丸、志ろがね丸、天女丸 等


・瀬戸内海のローカル航路を運航していた会社。
・表紙写真の「志ろがね丸」は、流線型の画期的なデザインで有名。

[この年…国家総動員法公布、ナチス・ドイツがオーストリアを併合]
尼崎汽船
船客運賃及發着時間表 1938年(昭13)10月


就航航路:阪神−済州島・仁川、阪神−四国、阪神−北九州等
就航船名:大東丸、伏見丸、神代丸、第二君か代丸 等


・瀬戸内海航路および朝鮮半島航路を運航していた会社。
・朝鮮半島では、釜山・木浦・仁川・群山に寄港。
東京灣汽船
東京灣汽船時間表 1933年(昭8)11月


就航航路:東京−大島・三宅島・新島・八丈島・下田 等
就航船名:葵丸、楓丸、桂丸、菊丸、紅梅丸、小櫻丸、花丸


・今日の東海汽船の前身。
・当時は戦前の伊豆大島観光ブーム時代。
・「葵丸」には"ロマンスシート"(椅子席)があった。
・数年後「橘丸」が登場し、戦前の黄金時代を迎える。

[この年…日本が国連から脱退、ヒトラーが首相に就任]
1937年(昭12)の東京灣汽船の定期表は本館をご覧下さい。
愛知商船
航路案内 1937年(昭12)3月


就航航路:名古屋−鳥羽、蒲郡−鳥羽 等
就航船名:鯱丸 等(時刻表上には記載なし)


・伊勢湾および三河湾沿岸の都市や島を結ぶ。
・名古屋−鳥羽間は所要5時間。
・島を結ぶ郵便船も運行されていた。
・現在は伊勢湾フェリーおよび名鉄海上観光が同航路を運航。

[この年…日中戦争勃発]
瀬戸内商船
四國−中國 鉄道連絡船 1936年(昭11)6月


就航航路:尾道−今治・多度津、広島−今治 等
就航船名:第十−第十六東豫丸 等


・省線(いわゆる国鉄線)から通し切符で乗船できた。
・尾道−今治は6往復、尾道−多度津は5往復が運航。

[この年…2・26事件、ベルリン・オリンピック開催]
佐渡汽船
發着時間表 1936年(昭11)4月


就航航路:新潟−佐渡夷、直江津−小木、寺泊−赤泊・小木
就航船名:おけさ丸 等


・新潟−佐渡夷(両津)間は、冬季1往復・夏期2往復。
・現在は水中翼船「ジェットフォイル」が就航。
北日本汽船
定期航路案内 1935年(昭10)8月


就航航路:北海道−樺太、敦賀−清津・羅津・ウラジオストク ほか多数。
就航船名:天草丸、さいべりや丸、鈴谷丸、滿洲丸 等

・社名の通り、日本海や北方海域を中心に運航。
・樺太沿岸航路では、北緯50度日ソ国境までの各地をカバー。
・日本海航路は、欧亜連絡ルートの一部を形成する国際的航路。

[この年…ナチス・ドイツがユダヤ人差別を立法化]
1935年(昭10)の北日本汽船・樺太東海岸航路案内は本館をご覧下さい。
北日本汽船
伊勢灣と北海道・樺太航路 1936年(昭11)4月


就航航路:名古屋・四日市−東京−小樽−真岡・恵須取(樺太)
就航船名:安南丸、朝鮮丸、海jロ 等

・貨物主体の航路。
・中京と樺太を直接結ぶ航路としては唯一。
・大正14年に樺太廳命令の下に開航との記述。
・毎月6回運航。
・名古屋−恵須取(樺太西海岸)間は約10日。
大連汽船
榮口・大連・敦賀・伏木・新潟線 定期運航表 1936年(昭11)10月


就航航路:榮口−大連−敦賀−伏木−新潟
就航船名:河南丸、河北丸


・旧満洲の船会社。
・大連−青島−上海航路をメインルートとし、南満洲鉄道と結んで中国大陸からシベリア経由欧亜連絡ルートを構成していた。
・新潟線は、日本への同社唯一の定期航路。
・同線は月2、3回運航。
・榮口−新潟は所要10日間。
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